ネブカドネツァル王が見た巨大な像の夢とダニエルの解き明かし(付記)
ダニエル2:31-36aには次のように記されています。
“31 王よ。あなたが見ておられると、なんと、一つの巨大な像が現れました。この像は巨大で、異常な輝きを放って、あなたの前に立っていました。その姿は恐ろしいものでした。
32 その像は、頭は純金、胸と両腕は銀、腹とももは青銅、33 すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でした。
34 あなたが見ておられると、一つの石が人手によらずに切り出され、その像の鉄と粘土の足を打ち、これを粉々に砕きました。
35 そのとき、鉄も粘土も青銅も銀も金も、みなともに砕け、夏の脱穀場の籾殻のようになり、風がそれを運んで跡形もなくなりました。そして、その像を打った石は大きな山となって全土をおおいました。
36 これがその夢でした。”(2017)とあります。
ダニエルはこの解き明かしとして次のように語りました。ダニエル2:37-45節には次のように記されています。
“37 王の王である王よ。天の神はあなたに国と権威と力と栄誉を授け、38 また人の子ら、野の生き物、空の鳥がどこに住んでいても、これをことごとくあなたの手に与えて、治めさせられました。あなたはあの金の頭です。
39 あなたの後に、あなたより劣るもう一つの国が起こり、
その次の第三の青銅の国が全地を治めるようになります。
40 そして第四の王国ですが、それは鉄のように強い国です。鉄はすべてのものを砕いてつぶしますが、その国は、打ち砕く鉄のように、先の国々をすべて粉々に砕いてしまいます。
41 あなたがご覧になった足と足の指は、その一部が陶器師の粘土、一部が鉄でしたが、それは分裂した国のことです。その国にはある程度までは鉄の強さもありますが、あなたがご覧になったように、その鉄は粘土と混じり合っています。
42 その足の指が一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。
43 鉄と粘土が混じり合っているのをあなたがご覧になったように、それらは子孫の間で互いに混じり合うでしょう。しかし鉄が粘土と混じり合わないように、それらが互いに団結することはありません。
44 この王たちの時代に、天の神は一つの国を起こされます。その国は永遠に滅ぼされることがなく、その国はほかの民に渡されず、反対にこれらの国々をことごとく打ち砕いて、滅ぼし尽くします。しかし、この国は永遠に続きます。
45 それは、一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と青銅と粘土と銀と金を打ち砕いたのを、あなたがご覧になったとおりです。大いなる神が、これから後に起こることを王に告げられたのです。その夢は正夢で、その意味も確かです。」”(2017)とあります。
1.頭は純金
2.胸と両腕は銀
3.腹とももは青銅
4.すねは鉄
5.足は一部が鉄、一部が粘土
ネブカドネツァル王にヤハウェ(主)が見せた夢は、イスラエル民族と関係のある国々でした。
純金で表されたバビロンによって、南イスラエル即ちユダ王国は壊滅させられ、エルサレムは焼かれ、バビロンに捕囚になった者たちも数多くいました。
銀で表されているのはメディア・ペルシアの国です。
キュロス王(キュロス2世)は、B.C.600年頃、ペルシア王国の王である父カンビュセス1世と母マンダネ(メディアの王アステュアゲスの娘)の間に、王子として生まれた人です。
この人がアケメネス朝ペルシアの初代の王です。
このキュロスがイザヤ44:28、45:1に名前入りで預言されているキュロス(第三版は「クロス」)です。
キュロスはバビロン捕囚から捕囚民を解放した人です。
ペルシア帝国の最初の5王の順序は、
1.キュロス(治世年代:B.C.559-530年)
2.カンビュセス(治世年代:B.C.529-522年)
3.ダレイオス(治世年代:B.C.521-486年)
4.クセルクセス(治世年代:B.C.485-465年)
5.アルタクセルクセス(治世年代:B.C.464-424年)
で、アルタクセルクセスが、エズラ記とエレミヤ記に出てくるペルシアの王では最後の王です。
それからも次々と王は立てられペルシアは、B.C.330年に滅びます。
イスラエル(ユダ+α)は、ペルシア帝国の中の一つの州(ユダ州)として存在していました(エズラ、ネヘミヤ、エステル各記参照)。
青銅で表されているのは、ギリシアです。
ペルシアを敗北させたのは、古代ギリシアのアルゲアス朝マケドニア王国のバシレウス(王)であるアレクサンドロス三世{アレクサンドロス大王orアレキサンダー大王(在位期間:B.C.336-323年)}です。
アレクサンドロス三世は、イッソスの戦い{(B.C.333年)イッソスは現トルコハタイ県の地中海沿岸にあるイスケンデルン}でペルシアの王ダレイオス3世に勝利し、ダレイオス三世は逃走、次にガウガメラの戦い{(B.C.331年)ガウガメラは現イラク北部}でダレイオス3世に勝利し、ダレイオス三世は逃走、ダレイオス3世はB.C.330年謀反によりベッソス等により殺されました。ダレイオス3世の葬儀を取り行ったのはアレクサンドロス三世でした。
ペルシア帝国の中の一つの州であったユダ州は、ギリシアの支配下に置かれました。
2019年9月23日の著者のブログ(抜粋)を下記します。
“アレクサンドロス三世に、主(ヤハウェ)なる神様が関与された故に、エルサレムが守られたという話をゼカリヤ書のところで述べましたが、今回、それを引用して記しておきます。これは穂谷牧師が石岡教会の礼拝で用いた原稿に少し加筆したものですが許可を受けています。ゼカリヤ9:1-8の小生のブログより引用します。
私が親しくさせて頂いている穂谷牧師の原稿の一部には、「〔アレキサンダー大王は、グラニコス川の戦い、次いでイッソスの戦いで(筆者挿入)〕ペルシアを抑えた後、レバント〔厳密な定義なありませんが東部地中海沿岸地方の歴史的な名称です(筆者挿入)〕に進む。諸国が彼に従うなかで、ツロは拒む。アレキサンダー大王が建前でヘラクレスを拝むため、ツロの神殿を訪れたいと言ったとき、〔ツロは(筆者挿入)〕本殿は陸の方にあると言って拒んだ。激怒した大王は、800mと深さのある海に、がれきをなげこんで道を作った。7ヶ月かけた。45mの城壁があり、〔大王が(筆者挿入)〕城壁崩しを揃えても、〔ツロは城壁を(筆者挿入)〕より高くし、登ってくる兵を倒した。そのとき、これまで傲慢だったツロに怒ってたシドンなどの周辺〔の民(筆者挿入)が〔ツロを(筆者挿入)〕裏切って攻撃。見事、〔ツロは(筆者挿入)〕陥落した。〔エゼキエル26:4で、主はツロを、(筆者挿入)〕「裸岩にする」と〔預言されているようにツロは(筆者挿入)〕更地になった。
ツロへの道を作っていた7ヶ月間、〔アレキサンダー(筆者挿入)〕大王は食料を支援するようにペルシャ権力下のユダに使者を送った。そして、今後大王につかえるようにと命じた。
しかし、大祭司ヤドハは、ダレイオスに従うと創造主に約束した手前できないと断る。大王は怒り、片付いたら次はユダを攻めるとメッセージ。
神に大祭司の服装を着て大王に会いに行くよう命じられたヤドハ。大王はマケドニアをでるときに、〔夢で(筆者挿入)〕勝利を約束した人物がその大祭司の服装であったと言って温かく迎える。
その際にヤドハが大王に見せたのがダニエル8:5ー8、20ー22。これは200年前に預言されていた。
大王は喜び、税金軽くし、兵役を免除した。→ヨセフスのユダヤ古代史に記載。」とあります。
エルサレムは、アレクサンドロス三世の攻撃から守られました。私たちキリスト者も主によって守られています。しかしそうは思えない時もあります。それは、主が私たちを懲らしめ聖くするためであったり(ヘブル12:5-11)、或いは私たちの一見不幸とも見えることを通して主が御業をなされるためです(使徒16:14-34、22:1-21)。主は主のあかしのため、魂の救いのためにキリスト者への迫害や殉教を許可されることがあるのです。しかし、迫害されたり殉教した者への報酬は大いなるものがあります(マタイ5:10-12)。
詩篇4:3には「知れ。主はご自分の聖徒を特別に扱われるのだ。私が呼ぶとき主は聞いてくださる。」(新改訳)と記されています。”とあります。
アレクサンドロス三世亡き後のこの帝国のことはネブカドネツァル王の見た巨大な像の夢には出て来ませんが、敢えて言えば、青銅の部分は「腹ともも」です。腹は一つですがももは一つではありません。アレクサンドロス三世亡き後、この国は4つの地域に分けられて各統治者が統治しました。
ダニエル7:6には、“その後、見ていると、なんと、豹のような別の獣〔アレクサンドロス三世(筆者挿入)〕が現れた。その背には四つの鳥の翼があり、その獣には四つの頭があった。そしてそれに主権が与えられた。”(2017)との預言が記されています。
ネブカドネツァル王の見た夢の中の巨大な像のすねは鉄でした。この鉄はローマ帝国を表します。
ユダヤはその後ローマの属州となるのです。
ローマ皇帝アウグストゥスの時代に、神のひとり子である神の御子〔神は霊です(ヨハネ4:24)〕が十字架にかけられるために肉体を纏われマリアから生まれたのです。
ネブカドネツァル王の見た夢の中の巨大な像の最後は、足で、一部が鉄、一部が粘土でした。
わたしの推測ですが、これは大患難時代の十本の角、すなわち反キリスト{(獣)黙示録13:1ー10}が治める連合国です。反キリストは、携挙後3年半たつと自分を神としないイスラエルの民を迫害するのです。
イエス様の十字架と復活によって、神様の経綸は、教会時代へと移りました。そして携挙後、神様の経綸はまたイスラエルに回帰するのです(私の推測です)。
その様に考える理由は、ダニエル9:24-27の預言で、次のように記されています。
“24 あなた〔ダニエル(筆者挿入)〕の民〔ユダヤの民(筆者挿入)〕と、あなたの聖なる町〔エルサレム(筆者挿入)〕については、七十週〔1週は7年で490年のこと(筆者挿入)〕が定められています。これはとがを終らせ、罪に終りを告げ、不義をあがない、永遠の義をもたらし、幻と預言者を封じ、いと聖なる者に油を注ぐためです。
25 それゆえ、エルサレムを建て直せという命令が出てから、メシヤなるひとりの君が来るまで、七週と六十二週あることを知り、かつ悟りなさい。その間に、しかも不安な時代に、エルサレムは広場と街路とをもって、建て直されるでしょう。
26 その六十二週の後にメシヤ〔イエス・キリスト(筆者挿入)〕は断たれるでしょう〔イエス・キリストの十字架(筆者挿入)〕。ただし自分のためにではありません〔すべての人の罪のため。但し救われるのはイエス・キリストを信じた人(筆者挿入)〕。またきたるべき君の民〔ローマ軍(筆者挿入)〕は、町と聖所とを滅ぼすでしょう〔ローマ軍がA.D.70年にエルサレムを破壊(筆者挿入)〕。その終りは洪水のように臨むでしょう。そしてその終りまで戦争が続き、荒廃は定められています。
〔イエス・キリストの十字架と復活後からキリストの空中再臨時の携挙まで教会時代、イエス・キリストを信じるだけで救われるという恵みの時代(筆者挿入)〕
27 彼〔反キリスト(筆者挿入)〕は一週の間〔7年間(筆者挿入)〕多くの者と、堅く契約を結ぶでしょう。そして彼はその週の半ばに、犠牲と供え物とを廃するでしょう〔黙示録13:14.15、マタイ24:15参照(筆者挿入)〕。また荒す者が憎むべき者の翼に乗って来るでしょう。こうしてついにその定まった終りが、その荒す者の上に注がれるのです」。
〔彼〔反キリスト(筆者挿入)〕は一週の間〔7年間(筆者挿入)〕、多くの者と同盟〔契約(聖書協会共同訳)〕を固め、半週でいけにえと献げ物を廃止する〔携挙後に建てられるエルサレム第三神殿におけるいけにえと献げ物を廃止する(筆者挿入)〕。憎むべきもの〔獣{反キリスト}の像(筆者挿入)〕の翼の上に荒廃をもたらすものが座す。そしてついに、定められた破滅が荒廃〔荒廃をもたらすもの(聖書協会共同訳)、「荒廃をもたらす者」=反キリスト(獣){筆者挿入}〕の上に注がれる。(新共同訳)〕”(口語訳)とあります。
70週の預言に関連して、注解付新改訳聖書の注は、二つの解釈をあげていますが、その内の一つを下記します。
“〔25節の「エルサレムを建て直せという」(筆者挿入)〕命令〔エレミヤ2:1-8(筆者挿入)〕をB.C.445年〔アルタクセルクセス王の第20年(筆者挿入)〕のネヘミヤへの勅令とし、ユダヤ式の数え方で、69週後〔173880日(筆者挿入)〕をA.D.32年、キリストのエルサレム入場〔4月6日(筆者挿入)〕と解する説もある。”と記されています。
ネブカドネツァル王が見た巨大な像の夢は、神様の経綸に基づくユダヤの民とエルサレムに関係するものであったのだろうと推測します。
ダニエル2章の
“44 この王たちの時代に、天の神は一つの国を起こされます。その国は永遠に滅ぼされることがなく、その国はほかの民に渡されず、反対にこれらの国々をことごとく打ち砕いて、滅ぼし尽くします。しかし、この国は永遠に続きます。
45 それは、一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と青銅と粘土と銀と金を打ち砕いたのを、あなたがご覧になったとおりです。大いなる神が、これから後に起こることを王に告げられたのです。その夢は正夢で、その意味も確かです。”という解き明かしは、おもに神の王国(神が王として治める王国)のことを言っており、先ずは、キリストが支配する教会、キリストの千年王国、それに続く新天新地における神の王国のことを大雑把に言っているのだろうと思います。
ダニエル7章も根本的にはダニエル2章と同じです。
ダニエル11章は、バビロンが滅びた後の預言なので、ペルシアから後の時代の預言がやや詳しく記されています。
特にアンティオコス・エピファネス(治世年代:B.C.175-163年)を「卑劣な者」(ダニエル11:21)と紹介しています。
アンティオコス・エピファネスがどの様な人物であったかについては旧約聖書続編マカバイ記に記されています。
アンティオコス・エピファネスは、大患難時代の反キリストの予型としても見ることができます。
ダニエル書11:1-12:1の預言もダニエル9:24の、
“あなた〔ダニエル(筆者挿入)〕の民とあなたの聖なる都〔エルサレム(筆者挿入)〕について、七十週が定められている。それは、背きをやめさせ、罪を終わらせ、咎の宥めを行い、永遠の義をもたらし、幻と預言を確証し、至聖所に油注ぎを行うためである。”(2017)と記されている神の経綸に基づく範囲内の預言であり、聖書66巻を聖典としている信仰者グループにとっても、ダニエル書は、ネヘミヤ記やマラキ書以降の時代の預言が記されているものであることが分かります。